プロ教師による試験分析

令和5年度、行政書士試験を受験された皆様、お疲れ様でした。このページでは本試験分析をまとめております。次年度の受験に向け準備されている方の参考にしていただければ幸いです。

これら以下をまとめてくれた家庭教師を紹介できます。まずはご相談下さい。きっと合格を勝ち取る一歩となれると特におススメ致します。実績あるプロ家庭教師による面談、ガイダンスや無料体験をお受け頂いた後に、お申込みをご判断頂いております。(過去問分析では平成30年度の分析をまとめております。本年度の過去問分析につきましては担当教師にご確認ください。)

1 全体総論

一般法人行政書士試験研究センターによると、
令和5年度は、受験人数46,991人中,合格者は6,571人,合格率は13.98%でした。
これは,前年度の合格率と比べ上がりました。参考までに平成10年度までさかのぼり年間のデータを表にしてみました。これをみると合格率の変化が分かります。

試実施年度受験者数合格者数合格率
平成10年度33,408人3,681人5.85%
平成11年度34,742人2,240人4.29%
平成12年度44,446人2,902人8.01%
平成13年度61,065人6,691人10.96%
平成14年度67,040人12,894人19.23%
平成15年度81,242人2,345人2.89%
平成16年度78,683人4,196人5.33%
平成17年度74,762人1,961人2.62%
平成18年度70,713人3,385人4.79%
平成19年度65,157人5,631人8.64%
平成20年度63,903人4,133人6.47%
平成21年度67,348人6095人9.05%
平成22年度70,586人4,662人6.60%
平成23年度66,297人5,337人8.05%
平成24年度59,948人5,508人9.19%
平成25年度55,436人5,597人10.10%
平成26年度48,869人4,043人8.27%
平成27年度44,366人5,820人13.12%
平成28年度41,053人4,084人9.95%
平成29年度40,449人6,360人15.72%
平成30年度30,195人4,968人12.70%
令和元年度39,821人4,571人11.48%
令和2年度41,681人4,470人10.72%
令和3年度47,870人5,353人11.18%
令和4年度47,870人5,802人12.13%
令和5年度46,991人6,571人13.98%

難易度はそれほど変わっていません

ではなぜこのように合格率が上下してしまうのでしょうか。

例えば、国家資格によっては一定の合格者を輩出し,有資格者を確保する国としての責任を問われたりします。それを防ぐために、合格率を上げたり、資格要件を緩和したりなど国の規制緩和が行われたりします。

ですが、行政書士試験は(一般教養部分の絶対評価はありますが)、6割得点で合格するという、合格者の人数調整で合格点が変わる、いわゆる相対評価をとっていません。つまり、6割取れれば、多い少ないに関係なく合格できる絶対評価形式をとっています。

行政書士試験は新制度に改変されて以来、難化傾向が続き、1年弱の学習で受かる人も少なくなりました。現在は2~3年あるいは4~5年かけてじっくり勉強する必要があるということが定着したことが一つの原因といえるでしょう。

そして本年度は、受験者数も前年度と比べ増えたため、分母が増えたことも、二つ目の原因と言えるでしょう。

行政書士試験に合格するためには、どのように学習をすすめていけばよいでしょうか?

ズバリ効率化です。
ただ、要領よくテクニックを駆使するなどということは言いません。きちんと努力することは必要ですし、また、きちんと理解しないと行政書士の実務もできません。

幅広い学習範囲をやみくもに進めることは非効率です。効率化のためには、出題される論点をしっかりつかむこと、過去問分析をきちんと行うことです。現に、先述、難易度はさほど変わっていないと言いましたが、実は行政法・国家賠償法では28年度に対して、平成30年度は過去既出論点が出題されています。きちんと過去問分析をされた方には難易度は下がっていたと言えます。

以下、例題として平成30年度の試験でみていきましょう。(本年度の分析につきましては、担当教師にご確認ください。)

21問目の国家賠償法の出題です。

消防署職員が鎮火したと思われた現場から残り火が再燃、再出火の危険回避義務違反を国賠法4条および失火法による重過失の適用があるかという判旨を空欄補充で問う問題でした。初見論点ですと、ゆっくり読まないと争点が見えてこない論点です。が、実は平成24年度に出題された論点で、その際、内容を理解していれば、正解肢にたどりついた問題でした。

次に、問題46の記述式問題です。

不法行為による損害賠償請求権の消滅という724条そのものズバリを訊いてくる問題でした。民法709条不法行為をきちんと学習していた方はOKでした。

けれども、記述式は自分で文章を40字程度にまとめて作らなければいけないから苦手、さらには「不法行為は勉強したけれど、あれ…消滅期間って…」という方はOUTでした。

もっというなら問題文中に「2つの場合」と、条件がついていたため、「損害及び(又はではないのです)加害者を知ったときから3年間」、「不法行為のときから20年間」と2つに分けて記述する必要がありました。条文を丸暗記していたか、内容を分析的にきちんと理解していないとできない問題でした。

こうしてみると、平成29年度は、既出論点が28年度より4~5問多く、難易度が下がったという見方もできます。が、やはり合格した受験生の頑張りという要因があることも見逃せません。

先述の例題でもわかる通り、平成29年度は、合格率が上がったとはいえ、要領・テクニックだけの学習ではない、過去問をしっかりやりこむ、条文をきちんと理解していた方が合格していったとわかる出題でした。

行政書士試験の家庭教師のススメ

30年以上前の行政書士試験であれば、法律の知識ゼロでも3か月勉強すれば合格できるなどと言われていました。けれども今や、1年、2年の学習期間は当たり前です。働きながら、法律知識ゼロからであれば4年以上、大学並みに学習を重ねて合格される方も多いです。

時代は規制緩和の流れになり、手続きのために必要な書類はどんどん簡素化されていきます。その場合、行政書士は単なる書類整備の代書屋さんではなく、総合的な相談業務を行える法曹家という位置づけになってきています。

そのためには、幅広い一般教養と豊富な判例知識が必要となります。法律に慣れている方ならまだしも、難解な判例要旨を理解することは短期間では難しいでしょう。

「この判例、結局何を言っているの?」「ここは何が争点なの?」といった疑問にすぐ答えてもらえるのはやはり個別指導の強みだと思います。二人三脚で合格に向けてお手伝いできることを心待ちしています。

平成30年度は平成24年度と同じくらいの難易度であったといえるでしょう。ただ、科目や肢によっては難しいものもありました。特に商法・会社法に関しては、例年通り難易度はかなり高かったといえます。さらにつけ加えるなら行政法分野の「住所」「行政の自己拘束」など問題文を読んだとたんに「何これ?」と心を折られる問題が多かったように思えます。 

2 基礎法学

 基礎法学からは、問題1「法文の解釈」と,問題2「司法制度改革」の2問が出題されました。
テーマはどちらも予想はついていたのですが、問題1はやや文章理解か国語の問題かとツッコミをいれたくなるような問題でした。

問題2の司法制度改革は、一般知識の勉強としてしっかり学習していた方の勝利かな?と。あとはクラスアクションという法学用語の理解が必要だったと思われます。

⇒過去の記述で参考補足 ⇒基礎法学

3 憲法

憲法からは,5問出題、例年どおりでした。

問題3「国籍法違憲最高裁判決の意見」、問題4「私人間効力」問題5「権力分立」問題6「議院の権能」問題7「レペタ事件(人権)」と、人権と統治のバランスも例年通りだったかと思います。

人権の問題はどちらも判例知識を要求されているように見えますが、国籍法違憲は旧年度でも出題されており、私人間効力は、聞かれている内容は結局有名判例であること、レペタ事件も結局問われているのは取材の自由、と比較的解き易かったのではないかと思います。

統治の問題では、問題6「議院の権能」は、きちんと学習していた方は点取り問題でした。反面、問題5「権力分立」はアメリカ、フランス、ドイツなどの制度比較もきいており、一般知識の政治分野よりの知識が必要で、やや難問であったといえます。

4 行政法

行政法分野からは,19問出題され,難易度は過去問レベルでした。

出だしの問題8「行政庁の裁量」は判例からの出題であり、憲法ほど判例知識がない受験生にとっては鬼門な問題でした。

次の問題9「行政の自己拘束」も、問題文をきちんと読めばとけたかもしれないのですが「自己拘束?」と言葉の呪縛にとらわれ、あせってしまった方も多かったと思います。

行政手続法行政不服審査法は比較的過去問を踏襲した内容でした。

行政事件訴訟法は、問題16「義務付け訴訟」は、申請型と非申請型の違いをきいてきたり、問題17「原発訴訟」においては、原発訴訟を題材に訴訟法全般の知識をきいてくるなど、かなり難易度が高いと思います。

国家賠償法は例年どおり2問でしたが、問題19「民法との関係」、問題20「国賠法と判例」と、やや幅広い出題となっており、うまく得点に結び付けられなかった方も多いのではないかと思います。

地方自治法からは、4問の出題ということで去年よりも1問増えました。

問題21「住民監査と事務監査請求の比較」、問題22「条例及び規則」問題23「地方公共団体全般」の、この3問は過去問をしっかり学習していれば、得点できたと思います。ただ、問題24「住所」に関しては、「住所?」となってしまった受験生も多かったと思います。問題文を冷静に読め、地方自治における参政権をしっかり学習していた方は正答できたのではないでしょうか。

⇒過去の記述で参考補足 ⇒行政法 ⇒地方自治法

5 民法

民法からは,9問出題され,難易度も高くはありませんでした。

問題27「錯誤」、問題28「取得時効と登記」など、しっかり学習していた方は得点源とできたはずです。
ただ,問題29問題30「詐害行為取消権」は、民法の知識を横断的にきいており、問題文を読むだけでも体力(知力?)を消耗したのではないでしょうか。

さらに、問題33「組合」においては定義だけで学習を終わっていた方も多い中、肢5の「ここまできくか?」という判例の内容が入っていた点で、解けなくてもいい問題として処理していいと思います。

⇒過去の記述で参考補足 ⇒民法

6 商法・会社法

商法・会社法からは,例年通り5問出題されました。平成30年度も難しい問題が多かったと思います。問題36「商行為」にいたっては「申込み」に絞って出題されたり、と「ただでさえ条文が多い商法・会社法で、なぜこんなにピンポイントできいてくるかなぁ」という感じでした。

そうかと思うと問題40「公開会社の資金調達」など「どれだけ幅広くきこうとしてるんだ?」と感じる問題もありました。5問中1~2問解ければよし、としていい科目だったと思います。

⇒過去の記述で参考補足 ⇒商法・会社法

7 多肢選択式

憲法から1問,行政法から2問という出題で、これも例年通りだったと思います。

憲法に関しては,

「公務員の政治活動及び表現の自由」という論点が見抜ければ正答にたどり着けたと思います。

また,行政法に関しては,

問題42「通達の処分性」をききながらきいているのは「行政罰」のこと。問題22にも秩序罰が問われており、「平成30年度のトレンドだったのか?」という感じがしてしまいました。問題43「医薬品ネット販売」というトピックスにきちんと「当事者適格」「営業の自由」を絡めてくるあたり、テーマを見抜けば正答にたどり着けたといえる、問題作成者の技術の高い問題といえるでしょう。部分点があるので,ここで得点できた方も多いと思います。

⇒過去の記述で参考補足 

8 記述式

 行政法から1問,民法から2問が出題され、例年どおりでした。

問題44「行政事件訴訟」では判例ではありましたが「訴えの利益」というキーワードは見抜きやすかったと思います。
問題45「無権代理人の責任」は受験生の「もらった!」という心の叫びが聞こえるくらい書きやすかったと思います。
問題46「盗品の回収」も192条即時取得の延長線上にある193条をしっかり学習していれば過不足なく書けたのではないでしょうか。

⇒過去の記述で参考補足 

9 一般知識等

政治・経済・社会分野から、それぞれ2問ずつと、例年通りのバランスで出題されました。

政治・経済

問題48「戦後日本外交」と問題49「戦後日本経済」と、「歴史が平成30年のトレンド?」というカブり様でした。幅広くきかれてしまったので、若い受験生の方は苦労したのではないでしょうか。

社会分野からは

問題50「ペット」に関する問題や問題51「就労」に関する問題など、「新聞等で取り上げられている問題をもう少しほりさげて勉強しておいたほうがいいですよ」という出題者からのメッセージが感じられる問題でした。昔は「その年に起こった時事問題」が出題分野にあったこともあり、やはり行政書士を志す者は新聞にきちんと目を通すようにということなのでしょう。

情報関連からは、

4問、出題分野も「え?」とビックリするようなものはなく、難易度もさほど高くはありませんでした。

問題57「IT用語」も、マニアックな用語はありませんでした。ここはできれば得点源にしていただきたいところでした。

文章理解からは,

3問、これも例年通りといえるでしょう。平成24年は小説があったのに対し、平成30年は随筆、論説文という形で、比較的解きやすい問題でした。ただ、問題60「短文挿入」の問題は、一見空欄補充のように見えて、要旨把握問題に近いため、「落とした方がいるとしたらこの問題かな?」という感じでした。